イギリスへ行こう。
でも、そう決めた瞬間に浮かんだのはワクワク感ではありませんでした。
「旅費、どうしよう……」
その一言でした。
20年前なら、勢いだけで飛び出していたかもしれません。 でも、47歳になった今は違います。
飛行機代、ホテル代、現地での滞在費。そして、容赦ない円安。 現実の数字が頭の中に並び、最初に浮かんだのは「やっぱり無理なのかな」という弱気な言葉でした。
でも、諦めるという選択だけはしたくありませんでした。
生活費を削るのではなく、新しく旅費をつくる方法を考えよう。そう決めた瞬間、この挑戦が始まりました。
家計簿を見て、決めたこと
夕食の買い物を終えて、いつものように家計簿を開きました。
「たまごの値段、また少し上がったな……」
「この500円のお菓子、買うか迷ったけど節約のためにやめておけばよかったかな……」
数十円、数百円のやりくりに頭を悩ませている自分。 そのレシートを入力しながら、ふと我に返ってしまいました。
「こんな節約を考えている主婦が、イギリスなんて言ってるなんて……何を考えているんだろう。」
その瞬間、夢を見ること自体が場違いのように思えてしまいました。現実を見れば見るほど、「イギリスへ行きたい」という気持ちが遠く感じられたのです。
画面に並ぶのは、食費、光熱費、日用品。
リアルな我が家の数字たち。
その画面を見ながら、ふと考えました。
「イギリスへ行くには、いくら必要なんだろう。」
20年前とは違う現実の数字
頭の中で、おおよその旅費を計算してみました。
- 飛行機代
- ホテル代
- 現地での交通費や食事代
20年前とは比べものにならないくらい高くなっていることは、毎日のニュースでも見て知っていました。
計算を終えるまでもなく、今の私には簡単に出せる金額ではないことだけは、痛いほどよくわかりました。
「生活費を削る」という選択肢を捨てた理由
もう一度、家計簿に並ぶ数字に目をやります。
この数字の中には、家族が毎日暮らしていくためのお金が詰まっています。
今日買い出しに行った食卓のご飯、お風呂を沸かす電気やガス代、子どものこれからに必要な教育費。 どれ一つとして、無駄なものなんてありません。
その数字を見つめているうちに、胸の奥から一つの確信が込み上げてきました。
「ここには、絶対に手を付けたくない。」
旅行に行きたいからといって、家族のおかずを1品減らすような節約はしたくない。 誰かに我慢を強いて、罪悪感を抱えながら飛行機に乗ったって、きっと心から楽しむことなんてできない。
自分の手で新しい旅費を作ってイギリスへ行く。
それこそが、47歳の私が20年ぶりに旅立つ「本当の意味」になる気がしたのです。
どうやってお金を作ればいいのか、具体的な方法はまだ分かりません。
「本当に私にできるんだろうか」という不安も、消えたわけではありません。
それでも、「生活費からは出さない」と固く決意した瞬間、「いつか行きたい」という夢が、初めて現実のスタートラインに立った気がしました。
自分でつくった旅費だからこそ、意味がある
20代の頃なら、「まあいっか」と貯金を切り崩して行っていたかもしれません。
でも、結婚し、子育てをし、家族のために家計を守り続けてきた47歳の今の私にとって、ただ「お金を作って行く」だけではダメだったのです。
家族の生活費に一切頼らず、自分の力だけでゼロから旅費を作り出すこと。 それは単なる旅行の準備ではなく、「誰かのためではなく、自分の足で自分の人生を動かす」という、私なりの挑戦でした。
自分で作ったお金で飛行機のチケットを買えたとき、私はきっと、20年前よりもずっと大きな達成感を感じられるはず。
そう確信したからこそ、「自分の力で旅費を作る」という選択以外、考えられなくなっていました。
旅費をつくる方法を探し始めた

「生活費は使わない。」
そう決めても、その先は何も決まっていませんでした。
旅費をどう準備するのか。
何から始めればいいのか。
答えを探すために、まずは手当たり次第に調べることから始めました。
本を読んだり、インターネットで調べたり、ノートに思いついたことを書き出したり。
ポイ活や不用品販売、在宅ワークなど、お金を作る方法は思った以上にたくさんありました。
けれど、「これなら今の私にも続けられそう」と心から思えるものには、すぐには見つかりませんでした。
それでも、不思議と焦りはありませんでした。
20年間ずっと胸の奥にしまっていた夢です。
たった数日で答えが見つかるわけがないし、見つからなくて当たり前だと思えたからです。
むしろ、「焦って失敗するくらいなら、今の自分に一番合う方法をじっくり探そう」という前向きな気持ちの方が大きくなっていました。
旅費づくりも、イギリスへ行くことも、きっと急ぐ旅ではありません。
一つずつ試して、一つずつ選びながら、自分なりの方法を見つけていこうと思っています。
「夢」ではなく「目標」になった日

20年間、「イギリスへ行きたい」という気持ちは、心の中にありました。
「いつか行けたらいいな。」
そんなふうに思っているだけで、何も変わらない毎日を過ごしていました。
それが今回、「生活費を使わない」と決めたことで、少しずつ変わり始めました。
夢が近づいたわけではありません。
状況が大きく変わったわけでもありません。
変わったのは、私自身の向き合い方でした。
「行きたい」ではなく、
「どうすれば行けるだろう。」
そう考えるようになったのです。
たったそれだけの違いかもしれません。
でも私にとっては、その違いが20年間で一番大きな一歩でした。
夢は、突然叶うものではなく、「叶えたい」と思い続けることでもありません。
小さくても、自分で動き始めた瞬間から、夢は少しずつ現実に近づいていく。
今は、そんなふうに思っています。
だから今日の私は、お金が増えたわけではありません。でも、「いつか」と言っていた昨日の私より、一歩だけイギリスに近づけた気がしています。
おわりに
イギリスへ向かう道のりは、まだ始まったばかりです。
どれくらい時間がかかるのかは分かりません。
それでも、今日も家計簿をつけながら、少しずつ前へ進んでいます。
たまごの値段に一喜一憂する毎日と、いつか見るイギリスの景色は、実は同じ地続きの場所にあるのだと思っています。
